アップストロークについて
モーラー奏法にも一般奏法にもアップストロークというストロークがあります。名前はまったく同じでも、この両者には大きな違いがみられます。一般的なアップストロークで、よく紹介されているものとしては、手首から先だけでいったん下に向かってタップして、そしてその後、スティックをチップの先から素早く振り上げるというものです。これではタップしてからすばやく振り上げていることになるので、残念ながら非常に能率の悪い動きになってしまいます。リラックスして音量やスピードを上げるためには、先端から先に動いてはだめなのです。そういう意味で、アップストロークとはどうあるべきかを考え直してみると、モーラー奏法でのアップストロークがいかに優れているかがわかってくることでしょう。当ドラムレッスンではアップストロークは内回転(うちかいてんという言葉は、当ドラムレッスンの造語で、上腕が内旋することで前腕が内側にまわるということです)で行います。一般的な奏法との決定的な違いは、けんこう骨を利用して、上腕を大きく内旋させることにあります。このようなストロークを行えることによって、ノーアクセントからアクセントへの移行がなめらかになります。したがってスピードも自然にアップしてくるのです。別な言い方をすると、けんこう骨から上腕を上げることで、前腕の途中から先が下にさがります。これによって音が出されるので、腕が動いている感覚としては、腕を上に上げているだけで、あてるというよりあたってしまったという感じなのです。アップストロークは、手首側が先に動いてしまう人が多いので、注意が必要です。ストロークをリラックスして行うためには、どんなにスピードが上がっても、手首から先「だけ」が動いてしまうことを避けなければなりません。そういう意味でも、モーラー奏法におけるアップストロークは、腕全体を動かすということのとてもよい訓練になるのです。